各国首脳による総会の一般討論演説で米中が異例の非難合戦を繰り広げた。特に米国は自国第一の姿勢が顕著で、多国間の協調を軽視する。国連は機能不全に陥っていないか。
二度に及ぶ世界大戦の反省から国連が創設されて７５年。新型コロナ拡大や地球規模の気候変動など各国の協力が今日ほど求められる局面はない。
それなのに国連総会が醜い相互批判の場と堕している。国連は他国をおとしめ、自国の利益だけを求める場ではない。米国をはじめ加盟国は改めて認識すべきだ。
トランプ米大統領は演説の冒頭から中国を批判。コロナを「中国ウイルス」と呼び「国連は責任を取らせるべきだ」と迫った。首脳が名指しで他国を非難しない総会の外交儀礼をあえて破った。
世界的な目標のために自国民を犠牲にしてきた、とも主張した。「自国民を大切にする」と米国第一主義に胸を張った。
トランプ氏の演説は国連加盟国にではなく、１１月の大統領選で投票する米国の有権者に向けたものだ。コロナ拡大を止められない政治責任を中国になすりつけ、外国に屈しないリーダー像を総会で演出する狙いは明らかだ。
反イラン、親イスラエルの中東政策も自身の支持層を引きつけるためだろう。一方的に離脱したイラン核合意の規定を根拠に武器禁輸延長を求めたが、安保理では相手にされなかった。
こうした米国の指導力低下と孤立は、中国やロシアにとって影響力拡大の好機となる。
習近平国家主席は演説で、名指しは避けながら「ドン・キホーテのように矛を振り回す」などと米国を批判。トランプ氏を諭すかのような余裕も印象づけつつ、多国間主義を強調してみせた。ワクチンや資金の提供、温室効果ガスの排出ゼロ目標も示した。
中ロとも、力に頼った国益追求をいとわず、人権に重きを置かない強権国家だ。主導権を握れば国連の運営は一層いびつになる。
フランスのマクロン大統領は「米中対立だけに世界が要約されてはならない」とし、国際協力の枠組みの構築を欧州が主導する姿勢を示した。先進国として責任の重さは日本も同じだ。
グテレス事務総長は「われわれは自らの１９４５年に直面している」と危機感を示す。互いに寛容になって平和と安全の維持に力を合わせる、とした国連憲章の原点に加盟国は立ち返るべきだ。
（9月25日）
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September 25, 2020 at 07:26AM
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