【カイロ=奥田哲平】新型コロナウイルス感染拡大による景気後退が鮮明となる中、中東湾岸の産油国経済を支えてきた外国人労働者が苦境に陥っている。突然の失職や自宅待機が相次ぎ、排外意識が高まる兆候も出ている。
サウジアラビアの首都リヤドで、配車サービス大手ウーバーの運転手として働くパキスタン人のキザンさん(26)は、電話取材に焦燥感をにじませた。「このまま仕事がなければ生活も家族への送金もできない」。政府は自国民の雇用維持のため、外国人運転手の登録を突然停止。一室に約二十人で暮らすキザンさんら多くの同胞が職を失った。
湾岸協力会議を構成する六カ国は裕福な国家財政を背景に、主に建設業や飲食小売業をアジアやアラブ諸国からの働き手に依存してきた。国際労働機関(ILO)によると、世界の移民労働者の一割超の二千万人以上が六カ国で就労、全労働者に占める外国人は六カ国平均で七割を占める。
クウェートの喫茶店に勤めるエジプト人のフセインさん(29)は、感染抑止策の営業停止で自宅待機中。経営者は週給四十ディナール(約一万四千円)を補償してくれているが、いつまで続くか分からない。「少しでも外出禁止に違反すれば、強制送還されてしまう」とおびえる。
クウェートの著名俳優は三月末、「病院のベッドがなくなる前に、外国人を送り返すべきだ」と発言、物議を醸した。地元紙は、飲食業で働く外国人五十万人が失業状態で「不満が募れば、将来の時限爆弾になる」と政府に支援を促した。
人口の80%以上を外国人が占めるカタールの首都ドーハでは、労働者の住居が集まる産業地区の一部で集団感染が発生。当局は一帯に警察官を配置して完全に封鎖した。労働者は二〇二二年のサッカーワールドカップ(W杯)の競技場建設現場などで働いていた。
国際人権団体アムネスティは、封鎖地区の居住施設が過密状態にあり、上下水道やトイレも不足する劣悪な住環境と指摘。「感染予防と医療を差別なく受けられるようにしなければならない」と訴えている。
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April 11, 2020 at 06:05AM
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