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NY「RAKUGO」修業の日々 真打ち 柳家東三楼 演芸評論家・渡辺寧久さんリポート:放送芸能(TOKYO Web) - 東京新聞

満員の観客を前に落語を披露する東三楼

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 落語を「RAKUGO」として世界に広める。そんな志を掲げて、米国に単身乗り込んだ落語家がいる。真打ちの柳家東三楼、43歳。昨年7月にアーティストビザと呼ばれる「O−1(オーワン)ビザ」を取得し、3年間の滞在を許された。順調な移住生活だったが、コロナウイルス禍に直面、軌道修正を迫られている。そんな東三楼の修業の日々を演芸評論家の渡辺寧久さんがリポートします。

 都市封鎖(ロックダウン)の米ニューヨークに暮らす東三楼は「スーパー以外は全く街が機能していない。落語会もすべてキャンセルになった」と最近の苦闘ぶりを語る。大学での落語講義、5月スタートの「全米RAKUGOツアー」などが取りやめや延期になった。そんな中でもやれることを見つけ、一つずつ着手している。

 「(西部の)シリコンバレーの会社と契約し、月額制のオンラインサロンを4月3日に開き、YouTubeでも落語史の授業を始めました。ぜひ登録してください」

 中心部マンハッタンから地下鉄で約1時間。ブルックリンのシェアハウスが活動拠点だ。「家賃は月550ドル。アカデミー賞を受賞した映画『パラサイト』は半地下ですが、ここは地下室。風呂、トイレ、キッチンは共有。すごい環境ですけど楽しい」と笑って語っていた。

講義を受け持つ大学での一こま。学生たちとそばをすするしぐさ

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 昨年7月、芸術、スポーツなどの分野で顕著な才能を持つ外国人にしか発給されない「O−1ビザ」を、落語家として初めて取得。「必要な書類は、レターサイズで約400枚。弁護士とのやりとりに約8カ月、費用は約100万円。思い出すだけでうんざり」という煩雑な作業を経て手に入れた。

 1999年春、柳家権太楼(73)に入門。滑稽噺(ばなし)や人情噺を磨き、高い評価を得てきた。その成果を示そうと参加した2016年の第71回文化庁芸術祭で、大衆芸能部門の新人賞を受賞。それが移住のきっかけになったという。「日本での暮らしは安定していて魅力ですが、落語は常々アートだと思っていた。アートの本場はニューヨーク。そこで自分の落語を試して、進化させたいと思うようになりました」

 「思い立ったら即実戦」が東三楼の流儀。フィリピンの英語学校のインターネット授業で英会話を磨くなど、準備に着手した。ビザ取得前から「身辺を身軽にした」という。マンションを引き払い、家財道具を売り払い、身銭を切って全米で70公演を無料で行い、ネットワークを広げた。それが今につながっている。折しも、ニューヨークで落語好きの邦人330人が加入する親睦会「紐育落語会」と懇意になった。皆本剛会長は「当初は移住できるのか不安でしたが、彼にはいろんなところに飛び込む突破力がある。それが素晴らしい」と共感する。

文化庁芸術祭の大衆芸能部門新人賞を受賞した時の東三楼(右)

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 しかし、昨夏の渡米時には日本での蓄えはすっからかん。待ったなしで稼がなければならず、大学や現地の日本人会で落語会や落語講義を行い、少しずつ収入を得た。「二つ目時分、居酒屋に飛び込んでは『やらせてください!』って営業をしましたけど、同じことをこの年齢でやっていますよ。レストランやマッサージ店にお願いして落語会をやらせてもらっています」

 出演に当たってはギャラを交渉し、契約書を交わす。日本のような、何となくで決まることはない。毛せん、座布団、スピーカーなども持参し、高座も自分でこしらえる。「日本で積み上げたキャリアや真打ちという看板も意味がない。ここではすべてがゼロからです」と、これまで歩んできた「道」がないことを自覚し、あべこべに喜ぶ。

 深刻なコロナ禍のため、近く一時帰国することに。しかし、「今後もニューヨークを中心に海外で活動します。他の国や地域でも落語をしたい」と誓う。再渡米し、必ずや「RAKUGO」を全米、そして世界に広める。決意を新たにした。

 「落語界という縦社会で過ごした僕にとって、米国は本当に自由。43歳で移住しましたが、誰も年齢を気にしない。稼ぐのは大変ですが、僕にはいい環境でした」。ポジティブ思考で、次の方策を練る。

◆米学生指導・ネットラジオ… 普及へ着々

書家田中太山(左)揮毫(きごう)の「めくり」

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 奮闘する東三楼だが、日米では勝手が違う。独演会にゲスト出演する間柄で、一五年夏からニューヨークを拠点に活動する書画家の田中太山は「日本でやっていることをそのままぶちまけても、お金にならない」と指摘する。

 東三楼は風土の違いを実感しながら、米国人、現地邦人に受け入れられるために工夫を凝らす。「例えば(人情噺の)『芝浜』には、かみさんに当たりの強い旦那が登場しますが、そのまま披露すると引かれる。『動物園』では動物の動きをオーバーアクションにしないと喜んでもらえない」

 これまで、ニューヨークのほかボストン、シリコンバレー、ロサンゼルスなどで落語会を開いてきた。ハーバード大やタフツ大などでは落語研究会「RAKUGOクラブ」の設立を手助け。「日本人より日本語ができる学生がメンバー。落語のテキストを送り、ネットを使って遠隔で指導しています」

 さらに、全米をカバーする日本語インターネットラジオ「さくらラジオ」でも毎週一回、レギュラー番組「三代目柳家東三楼のアメリカよもやま噺」を持つ。収入は「月に三千ドルいけば」ともくろんでいたが、「昨年九月は振り込みが遅れ、二ドルで一週間過ごしたこともある」と綱渡りも経験。食事は自炊が基本。自宅で飲酒しないというルールも課している。

ニューヨークでの高座から

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<やなぎや・とうざぶろう> 1976年9月28日、東京都江東区生まれ。99年4月、柳家権太楼に入門。前座名はごん白。2002年、小権太で二つ目、14年3月、真打ちに昇進し、名人・古今亭志ん生も一時期名乗った「柳家東三楼」を三代目として襲名した。16年、第71回文化庁芸術祭の大衆芸能部門で新人賞を受賞。

 ※公演やイベントなどは、新型コロナウイルスの感染防止のため中止や変更の可能性があります。

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April 06, 2020 at 08:57AM
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