青空に白い線を引いてジェット戦闘機が飛んでいく。見上げる男性たち。その一人、ハレドさんが「アサドのせいで俺たちは空ばかり見ている」と笑う。ぽっちゃりした、人の良さそうな顔。
「アレッポ最後の男たち」。爆撃下、ハレドさんたちは人命救助に懸命になる
ずんっ! 爆弾が落ちたのだろう、激しい音で彼の表情が一変する。「アレッポ最後の男たち」(デンマーク・シリア)は冒頭3分で一気に緊迫。がれきに埋もれた子どもたちを掘り出そうとするハレドさんたちの姿を伝え、胸を締め付けられる。シリアは2011年、民主化運動が契機となり、内戦状態に陥った。9年がたち、アサド政権はロシア軍の支援で攻勢を強めている。人権監視団体の調査によると、この間に38万人が亡くなり、うち3分の1は民間人。多くの子どもたちが含まれている。
現地には通称「ホワイト・ヘルメット」と呼ばれる市民団体があり、空爆などで破壊された建物から負傷者を助ける活動を続けている。16年に「もう一つのノーベル賞」と呼ばれるスウェーデンの「ライト・ライブリフッド賞」を受賞。10万人以上を救ってきたとされ、映画のハレドさんも同団体の一人だ。
子どもが複数生き埋めになった現場。1人では動かせないようなコンクリート破片の下に手を入れ、土砂をかき出す。かすかな泣き声が聞こえ、ハレドさんたちは「下に子どもがいる!」「すぐに助けるからな」「怖くない、もうすぐ出られるよ」と声を掛け続けるのだった。
幼い娘たちの父親でもある彼は、冗談をよく言う、子ども好きの優しい人。家族で小さな公園のイベントへ出掛けて、滑り台などではしゃぐのだが、そこにも爆撃機が近づく。
シリアで行われているのは、無差別爆撃という虐殺。ハレドさんと心優しき友人たちは、国際支援から孤立した街で、へとへとになってこう言う。「世界はどこに?」
国連によると、緊急人道支援が必要なシリアの人は1350万人に上る。日本は18年にシリア以外も含めた1万493人から難民申請を受けたが、認定して受け入れたのは42人。このうちシリアは3人だった。
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「少女は夜明けに夢をみる」。少女たちの孤独に胸が詰まる
「少女は夜明けに夢をみる」(イラン)は、テヘランにある更生施設に、強盗や殺人、薬物、売春、浮浪などの罪で収容されている少女たちの姿を描く。親が薬物中毒や精神疾患を患っていたり、親族から虐待を受けていたり、彼女たちの過酷な生い立ちが浮き彫りになる。父親を殺したという少女は、薬物中毒で家族に暴力を振るっていた父親について語る。「黒いキャンディーはアヘンのこと。6歳の弟はその意味を知っていて、吸い殻も吸っていた」。そんなひどい状況から逃れるために、母親や姉と話し合い、父親に手を掛けたのだという。
叔父から性虐待を受けた少女は、母親に相談したものの、うそつきだと言われてぶたれたと話す。「君の夢は?」「死ぬこと」「会いたい人は?」「いないわ」。インタビューにつぶやくように答える言葉が、彼女の孤独と痛みを伝える。一方で「何になりたい?」と尋ねると、「弁護士か警官」とほんの少し笑みを浮かべて言う。「他の子を―私や姉と同じ目に遭わせたくないから」
映像に出てくる親や祖母、更生施設職員たちの態度は、言葉を失うほどにひどい。更生すべきなのは誰か。施設から釈放されていった彼女たちは今どうしているだろうか?
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2作品とも、登場した人々の、その後の情報は少ない。想像し考え続けることが、求められているのだろう。
「少女は―」は27日午後1時40分と、午後7時からの2回。「アレッポ最後の―」は午後4時からの1回のみ。各1300円(当日1500円)。中高生800円。小学生以下無料。新型コロナウイルス対策のため、席数は通常の半分なので、当日券がない場合もある。できれば予約を。問い合わせは主催のゴトゴトシネマ(090・9803・9984)へ。(天野弘幹)
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June 24, 2020 at 06:39AM
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人の尊厳問う中東映画 「アレッポ最後の男たち」「少女は夜明けに夢をみる」 高知市で6/27 上映 - 高知新聞
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