東日本大震災から9年半。震災遺構がまた一つ、消えようとしている。観光船「はまゆり」が屋根の上に打ち上げられた岩手県大槌町の民宿だ。町は当初、撤去された観光船のレプリカを作り、民宿と共に残そうと寄付を募っていたが、解体へ方針を変えた。
「はまゆり」は津波のすさまじさを示す象徴として世界中に報道されたが、2カ月後に所有者の同県釜石市が「危険だ」として撤去、解体した。このため地元住民や県外の芸術家らが復元運動を始め、民宿の所有者も賛同。町もこれに同調する形で翌12年、レプリカでの復元や民宿周辺を整備するため、資金を寄付で募る基金条例を制定した。
整備に向けて町は4億5千万円が必要だと推計したが、基金条例ができた頃には、支援の動きも熱が冷め始めていた。寄付は現在、395万円にとどまる。地元住民にも解体を望む声は根強く、復興事業が進むと「見苦しい」と解体を望む声がさらに強まった。
町長の交代によって、町の方針も変わった。条例制定時の町長は「震災を町の文化に」と旧役場庁舎など町内に震災遺構を残し、交流人口の拡大を構想した。だが、2015年に当選した新しい町長は「建物に頼らない伝承」を掲げ、遺構の全廃に転換。19年には町職員39人が亡くなった旧役場庁舎も解体した。
復興事業の一環として国費で解…
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September 16, 2020 at 07:59AM
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消えゆく震災遺構 船乗り上げた民宿、寄付及ばず解体へ - 朝日新聞デジタル
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