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知事、社殿改修寄付集め関与 県護国神社の「鳥居改修」以前に - 信濃毎日新聞

 宗教法人長野県護国神社(松本市)の支援組織、崇敬者会の会長を務める阿部守一知事が、同神社の社殿改修の寄付集めにも関わっていたことが9日までに、分かった。知事は、2018年の同神社鳥居修復の寄付集めで崇敬者会長として呼び掛け人になったことが昨年8月、信濃毎日新聞の報道で表面化。特定宗教への援助になる寄付募集への関与を繰り返していたことになり、憲法の政教分離原則違反の疑いが強まっている。

 護国神社境内にある社殿改修の寄付者に対する顕彰碑(2013年11月付)によると、現在の社殿は太平洋戦争中の1942(昭和17)年に建立された。屋根は檜皮(ひわだ)ぶきで59年に銅版にふき替えられたが、損傷が著しく、鎮座70周年記念事業として改修。関係者の寄付で竣工(しゅんこう)した。

 碑文は趣旨書きの最後に「御英霊の御遺徳を畏(かしこ)み、只管(ひたすら)御神徳の宣揚と慰霊顕彰に努め、県民の平穏無事を祈り、ここに碑を建て顕彰いたします」とあり、宮司の次に阿部氏の名前が崇敬者会会長として刻まれている。

 知事は4月からの再三の取材申し込みに応じず本紙は文書で質問、9日までに個人名で文書回答があった。社殿改修の寄付募集の呼び掛け人になったかとの問いに「鳥居修復事業と同様に、私的な活動として行ったものです」と答えた。

 政教分離違反の疑いが出ていることに対しては昨年8月と同様、「私的な活動であり、憲法には違反しないものと認識しています」と回答。会長職を続けるかどうかは「公務が最優先ですが、できるだけ早く考え方を整理します」とした。

 これに対し、高見勝利・北海道大名誉教授(憲法学)は「(寄付募集への関与が)反復継続することで県と神社の結び付きを象徴する役割を果たす」と指摘。「純粋に私的な参拝行為と異なり、神社を支援する崇敬者会の会長として寄付募集に関わっているので外形的に見て、憲法違反の疑いを払拭(ふっしょく)できない」としている。

 また、県弁護士会の中嶌知文会長は「昨年9月の会長声明、ことしの憲法記念日の会長談話でも述べているように、政教分離原則に違反する疑いが極めて強い。いまだに是正されないのは遺憾だ」と話す。この会長声明では「崇敬者会会長に就任したのは県知事の立場にあるからにほかならず、純粋な私人としての活動と評価することは困難」としている。

 県護国神社によると、崇敬者会は神社の活動を物心両面で支援する組織で、事務局は神社。田中康夫氏以外の歴代知事が会長に就いており、阿部氏は1期日の2011年4月に就任した。今回の件について同神社は「回答は控えさせていただきます」としている。

 (編集委員・渡辺秀樹)

(9月10日)

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